プレミアリーグの試合を見ていると、各クラブに様々な国籍の選手が在籍していることがわかります。
昨シーズンの王者マンチェスター・シティを見てみると、
というように、スターティングメンバ―の半分以上が外国籍選手のことも多いです。
外国人枠ってどうなってるの?と疑問に思いますよね…
結論から言うと、プレミアリーグに外国人枠の制限はありません。
外国人枠がないため各国のスター選手が集結しやすい理由にもなっていますが、その代わりに「ホームグロウン制度」や「労働許可ルール」といった厳しい規定が設けてあります。
そこで本記事では、プレミアリーグの外国人枠が気になるファンへ向けて、
について徹底解説します。
選手やクラブがどのようにしてこれらの規定をクリアしているのかを知ることで、プレミアリーグの魅力や深さをさらに感じてもらえることでしょう。
プレミアリーグの外国人枠
プレミアリーグに外国人枠はありませんが、選手の出場登録において独自のルールがあります。
以下にその詳細を挙げたうえで、具体的なポイントを掘り下げていきます。
プレミアリーグの選手登録制限
- トップチームに登録できる選手は25名まで
- 外国人枠はなし
- ホームグロウン選手を8名含む必要がある
- ホームグロウン選手以外の登録は最大で17名
- 21歳以下の選手は上記登録人数に関係なく登録できる
- 外国籍選手は労働許可証(就労ビザ)を取得する必要がある
外国人枠はありませんが、トップチームに登録できる25名のうち自国で育成されたホームグロウン選手を8名メンバーに登録する必要があります。
外国籍選手は、イギリスの法律により労働許可証(就労ビザ)を必ず取得しなければなりません。
ベンチ入りは9人までで交代枠は原則的に5枚、脳震盪の選手を入れ替えられる追加交代枠が1枚設けられています。
外国人枠がないぶん、厳しい登録制限があるようですね。
外国籍扱いの区分
イギリスがEUに加盟していた期間、EU加盟国およびヨーロッパ自由貿易連合(EFTA)加盟国の選手には労働許可証が必要ありませんでした。
しかし、2021年のEU離脱後、EUやEFTA加盟国の選手も労働許可証が求められるようになりました。
2023-24シーズンからはルールが緩和され、労働許可証を取得できなかった場合でも、各クラブは最大4名までの選手と契約できるようになりました。
クラブの選手獲得戦略がより自由になりました。
国内選手の定義
イギリス(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)及び、アイルランド国籍の選手は国内選手として扱われます。
プレミアリーグにおける選手登録規則には多くの厳しい条件がありますが、これらをクリアすることで、各クラブは個々の戦略を最大限に活用できるのです。
プレミアリーグのホームグロウン制度と労働許可証については、下の章で詳しく解説します。
プレミアリーグの『ホームグロウン制度』
プレミアリーグでは外国人枠が定められていないため、何人でも自国以外の選手を登録・出場させることができます。
しかしその代わりに、自国で育成された選手を一定数トップチームに登録しなければならない『ホームグロウン制度』というルールが設定されています。
ホームグロウン制度とは
ホームグロウン制度とは、自国で育成した選手(イングランドやウェールズのクラブで一定期間プレーした選手)をトップチームに登録する義務があるというルールです。
この制度は2010-11シーズンから導入され、自国育成選手の海外クラブへの流出を防ぐ目的があります。
ホームグロウン選手になるためには、
21歳の誕生日を迎えるまでに、3シーズンか36ヶ月以上、イングランドまたはウェールズのクラブでプレーしていなければならない(下部組織を含む)
という条件があります。
他国籍の選手であっても、10代のうちからイングランドやウェールズのクラブに所属していればホームグロウン選手の対象になります。
外国籍の選手でもホームグロウン選手になれるということですね。
ホームグロウン制度の導入目的
2000年代に入ると、チェルシーやマンチェスター・シティといったクラブが新しいオーナーによって運営され始め、豊富な資金を背景に世界中からスター選手を集めました。
その結果、プレミアリーグ全体のレベルは飛躍的に向上。
しかし、イングランド出身の若手選手が試合に出場する機会が減少してしまい、イングランドサッカーの将来が懸念されました。
この状況を打破するため、2011年からホームグロウン制度が導入されました。
若手選手にしたら面白くない状況ですよね。
ホームグロウン制度のメリット
ホームグロウン制度がプレミアリーグにもたらすメリットは以下の通りです。
- 若手選手のキャリア向上
自国の若手選手が試合に出場する機会が増え、経験を積むことで成長が期待できる - 海外流出の防止
プレー機会が増えることで、若手選手がわざわざ海外へ移籍する必要がなくなる - 代表チームの強化
国内での経験が自国代表チームの強化に結びつく
各クラブが8名のホームグロウン選手を必要とするため、出場機会に恵まれない選手でも国内の他クラブに移籍する可能性が高くなります。
結果的にイングランドサッカー全体の底上げに繋がります。
ホームグロウン制度のおかげもあって、アンダー世代のイングランド代表はレベルが高いです。
ホームグロウン制度のデメリット
一方で、ホームグロウン制度には以下のようなデメリットも存在します。
- 外国人選手の枠が減る
各クラブがホームグロウン選手を確保するため、優秀な外国人選手が登録できなくなることがある - ホームグロウン選手の市場価値が高騰
・ホームグロウン選手の需要が高まり価値が上がるため、高額な移籍金が発生することもある
・自由に移籍しづらくなる
例えば、元ドイツ代表でアーセナルに所属していた「メスト・エジル」選手は、2020-21シーズンにホームグロウン外の選手枠に収まらず、トルコのフェネルバフチェに移籍しました。
エジル選手ほどの実力者でも、ホームグロウン制度の影響を受けることがあるのです。
本来プレミアリーグで活躍するはずの選手が他国のクラブに移籍しなければならない状況が生まれてしまいます。
ホームグロウン選手がブランド化していますね。
プレミアリーグの『労働許可証(就労ビザ)』条件
プレミアリーグで外国籍の選手がプレーするためには、「ホームグロウン」認定を受けていない限り、イギリスの労働許可証、つまり就労ビザを取得する必要があります。
このルールは世界中の才能あるプレーヤーたちが、イングランドのトップリーグで活躍するための厳しい関門となっています。
労働許可証を取得する厳しい基準のために、クラブに登録できずに海外クラブへレンタル移籍する選手も少なくありません。
労働許可証の規定
労働許可証を取得するためには以下の3つの規定をクリアしなければなりません。
- FIFAランキング50位以内の国の選手であること
- FIFAランキング30位以内の国の選手に関しては、過去2年間の自国代表として公式戦に30%以上出場していること(21歳未満の選手は過去1年で考慮)
- FIFAランキングや代表出場歴とは無関係に、移籍金が1000万ポンドから1500万ポンド(約19億5000万円〜29億円)を超える市場価値を持つ選手であること
A代表にほとんど出場していない選手は労働許可証を取得できないことになりますね。
これらの基準をクリアしない選手でも、イングランドサッカー協会(FA)のポイントシステムによって、合計15ポイントを獲得すればプレミアリーグでプレーすることができます。
このポイントは以下の要素で構成されます。
例えば、ブライトンで活躍する前の三笘選手は、代表での出場割合が基準に達しておらず、ポイント不足のためベルギーリーグのサンジロワーズにレンタル移籍しました。
A代表や所属クラブでの実績が必要ということですね。
労働許可証のルール改定
2023-24シーズンからは、労働許可証を取得するための基準が一部緩和されました。
以下が主な変更点です。
- 労働許可証を取得できない選手は最大4名契約できる(クラブ毎に枠が違う)
- Jリーグのレベルがバンド6からバンド5に引き上げされた
世界中のサッカーリーグは6つのバンドに分けられており、レベルの高いリーグに所属する選手ほどポイントを獲得しやすい仕組みです。
Jリーグが最下層のバンド6からバンド5に引き上げられたことで、Jリーグでプレーする選手がより多くのポイントを稼ぐチャンスが増えました。
日本人選手にとって、プレミアリーグへの参戦に追い風となっています。
プレミアリーグでプレーする日本人選手が増えるのに期待しましょう。
プレミアリーグの外国人枠|まとめ
プレミアリーグに外国人枠そのものは存在しませんが、選手登録には特定の条件があります。
これらの制度やルールにより、プレミアリーグは競争力を維持しつつも国内選手の育成や国際的な魅力を保つことができています。
一部ルールが緩和されたとはいえ、日本人選手があまり増えていないのも現状です。
これからプレミアリーグで活躍する日本人選手が増えることにも期待してプレミアリーグを楽しみましょう。