プレミアリーグを見ていると、「ダービーマッチ」という言葉を耳にしますよね。単なる1試合なのに、選手もサポーターも熱量がとんでもない。
と疑問に思うこともあるかなと思います。
今シーズン(2025-2026)は、長年プレミアの舞台から遠ざかっていた伝統的なダービーが「復活」するとあって、例年以上に注目度が大きいです。
この記事では、今シーズン見られるダービーマッチの一覧と、その背景にある熱狂の理由、一番激しい試合はどれなのか?といった疑問についてまとめてみました。
ダービーマッチを知ると、プレミア観戦が何倍も面白くなるはずです。
- 今季プレミアリーグで開催される主要なダービーマッチ一覧
- なぜダービーがあれほど熱く「聖戦」と呼ばれるのか
- 2025-26シーズンに「復活」する伝説のダービー2選
- 複雑すぎるロンドンダービーの全貌と注目カード
プレミアリーグのダービーマッチとは?その熱狂の理由

「そもそもダービーマッチって何?」という基本の部分ですね。
プレミアリーグにおける「ダービー」は、単に「近所のチームとの試合」という言葉だけでは説明がつかない、もっと深くて熱いものがあります。
ダービーには、大きく分けて3つのタイプがあるかなと思います。
地理的ダービー (Local Derbies)
これが一番わかりやすい伝統的なダービーですね。同じ街、あるいはすぐ隣の地域にあるクラブ同士の対決です。
スタジアムが近いほどライバル意識が強い、といった感じです。
歴史的・文化的ダービー (Historical Rivalries)
地理的には離れていても、昔からの根深いライバル関係があるパターンです。
例えば、昔の産業(綿花 vs 羊毛とか)で競い合っていた都市同士の対立が、そのままサッカーに持ち込まれているケースもあります。
近代的ダービー (Modern Rivalries)
比較的歴史は浅いですが、近年のタイトル争いなんかで急速にライバル意識が芽生えた対決です。
ファン同士が高速道路の名前(M23)で呼び合うようになったり、理由は様々ですね。
ダービーと一口に言っても、その成り立ちはバラバラです。
誇りをかけた「聖戦」と呼ばれる理由
ダービーが「聖戦」とまで呼ばれるのは、それが単なる「勝ち点3」以上のものを賭けた戦いだからだと思います。
特に歴史の長い地理的ダービーでは、「この街の誇り(プライド)」そのものを背負っています。
家族や職場の同僚がライバルチームのファンだったりすることも日常茶飯事なので、ダービーに負けると、次の日まで(あるいは次の対戦まで)バカにされ続けるわけです(笑)。
選手たちもその重みを分かっているので、いつも以上に激しいプレーになります。
だからこそ、順位表では格下のチームが、ダービーだけは絶対に負けない!と、とんでもない力を発揮することもよくあります。
予測不能な熱量こそが、ダービーの最大の魅力ですね。
プレミアリーグで復活する伝説的ダービー

今シーズン(2025-2026)がなぜ「特異なシーズン」と呼ばれるか。
イングランドのサッカー史において最も重要とされる、2つの伝説的なダービーがプレミアの舞台に「復活」を遂げたからです。これは本当にアツい展開です。
復活!タイン・ウェア・ダービー
対戦カード: サンダーランド vs ニューカッスル・ユナイテッド
サンダーランドが、9シーズンぶりにプレミアリーグの舞台に復帰しました!一時は3部まで降格する苦難を味わった古豪がついに帰ってきたのです。
これにより、「タイン・ウェア・ダービー」が復活します。
イングランド北東部の二大都市、
両都市はわずか19kmほどしか離れておらず、歴史的に造船業や炭鉱業で激しく競い合ってきたライバル関係が、そのままサッカーに持ち込まれています。
- イングランド北東部の覇権を賭けた「聖戦」
- マンチェスターダービーのようなグローバルさとは対極にある、「最も純粋でローカルな激しさ」を持つダービーと評される
- サンダーランドの9シーズンぶりプレミア復帰で実現
「どちらが北東部の真の王か」を決める戦いであり、その熱気はイングランド随一とも言われます。
今シーズンのプレミアで最も危険で、最も熱いカードになるかもしれませんね。
復活!因縁のローズ・ダービー
対戦カード: リーズ・ユナイテッド vs マンチェスター・ユナイテッド
もう一つの「復活」が、「ローズ・ダービー」です。リーズ・ユナイテッドも今シーズン、プレミアリーグに昇格しました。
リーズも2000年代初頭の黄金期から一転、財政難で3部まで降格した暗黒時代を経験してるクラブです。
このダービーのルーツは、15世紀のイングランド王位継承戦争「薔薇戦争(ばら戦争)」にまで遡ります。
- ランカシャー州(マンチェスター)の紋章が「赤薔薇」
- ヨークシャー州(リーズ)の紋章が「白薔薇」
この歴史的な対立が、そのままダービーの名前になっています。
産業革命期にも、
- マンチェスターの「綿花」
- リーズの「羊毛」
これらが経済的に激しく競い合った歴史があり、単なるサッカーの試合を超えた「文化圏の代理戦争」となっています。
地理的には隣接していませんが、歴史的背景から、英国で最も根深いライバル関係の一つと言われています。
リーズとサンダーランドが今季昇格
今シーズンのダービーを語る上で、
この2クラブの昇格は本当に欠かせない要素です。
どちらもイングランドのサッカー史を語る上で欠かせない古豪であり、近年は3部リーグまで降格するというどん底を経験しています。
そんな2クラブが、同じシーズンにプレミアリーグへ復帰し、最も激しいとされる2つの歴史的ダービーが同時に復活するのですから、プレミアファンからしたら興奮する展開となりました。
リーズには田中碧選手が在籍しているので、活躍を期待しましょう。
プレミアリーグの伝統と現代の最重要ダービー

プレミアリーグには「復活組」以外にも、毎年恒例となっている超重要なダービーがたくさんあります。
伝統的なものから、現代の覇権争いまで、代表的なものをいくつか紹介します。
北部の覇権、ノース・ロンドン・ダービー
対戦カード: アーセナル vs トッテナム・ホットスパー
プレミアリーグで最も激しいダービーの一つとして、必ず名前が挙がるのがこのダービーです。ロンドン北部(ノース・ロンドン)の覇権を争う戦いです。
このライバル関係の根底にあるのは、トッテナム側から見た「侵略」と「不正」の歴史です。
- 1913年の「侵略」
元々ロンドン南東部にいたアーセナルが、トッテナムの本拠地からわずか6kmのハイベリーに「侵略」してきた。 - 1919年の「不正な昇格」
リーグ拡張の際、なぜか2部5位だったアーセナルが1部に昇格(トッテナムは降格)。
これにはアーセナル側の政治的ロビー活動があったとされ、100年以上経った今も「不正」として語り継がれています。 - 2001年の「禁断の移籍」
トッテナムのキャプテンだったソル・キャンベルが、最大のライバルであるアーセナルへ「禁断の移籍」をしたことで、憎悪はさらに燃え上がりました。
歴史と現代の裏切りが絡み合う、非常に根深いダービーです。
富の戦争、マンチェスター・ダービー
対戦カード: マンチェスター・シティ vs マンチェスター・ユナイテッド
かつてはユナイテッドが圧倒的優位だったこのダービーも、2008年のシティへの巨額資本投下以降、完全に様変わりしました。
今や単なる街の覇権争いではなく、プレミアリーグのタイトル争いに直結する、世界中が注目する「ショーケース」になっています。
両軍のスタメンの市場価格の合計がとんでもない金額になることから、
なんて呼ばれることもあります。
ある報道では、この一戦が放送されないのは世界でわずか4カ国だけ、とも言われたほど。
ローカルなダービーから、グローバルなエンターテイメントへと進化した、現代を象徴するダービーかなと思います。
友好的な憎悪?マージーサイド・ダービー
対戦カード: リヴァプール vs エヴァートン
この試合は、イングランドで最もユニークなダービーかもしれません。
それぞれのホームスタジアムは、公園を隔ててわずか950mしか離れていないのです。
あまりにも近すぎて、他のダービーのような明確な分断がなく、家族内や友人同士でファンが分かれるのが当たり前。
そのため、長らく「フレンドリー・ダービー (The Friendly Derby)」と呼ばれてきました。
…ただし、それはピッチの外での話(笑)。
ピッチ上では、プレミアリーグ史上最もレッドカードが多い試合として知られており、その激しさはリーグ随一です。
イングランド最大の対決ノースウェスト・ダービー
対戦カード: リヴァプール vs マンチェスター・ユナイテッド
地理的には少し離れていますが、これは「イングランド最大のライバル関係」と言われる対決です。
なぜなら、イングランドで最も多くのリーグ優勝を誇る、最も成功した2クラブ同士の戦いだからです。
産業革命期に、
が経済的に激しく競い合った背景があり、単なるサッカーのライバルを超えた対立意識があります。
イングランドの覇権を賭けた戦いともいえます。
複雑な首都決戦ロンドンダービー

「ロンドンダービー」という言葉もよく聞きますが、ロンドンは広すぎて、単一の「ロンドンダービー」は存在しません。
今シーズンは、なんと7つものクラブがロンドンに本拠地を置いています。
7クラブがひしめくロンドンダービー
今季(2025-26)プレミアリーグに所属するロンドンの7クラブは以下の通りです。
これら7クラブがそれぞれホーム&アウェイで対戦するので、今シーズンは単純計算で合計42回も「ロンドンダービー」が発生することになります。
当然、ライバル関係には強弱があります。
最強のライバル(アーセナル vs トッテナム)もあれば、そこまででもない対戦もある、というのが実情です。
チェルシーとフラムのウェストロンドンダービー
対戦カード: チェルシー vs フラム
ロンドンダービーの中でも、特に地域性が強いのが「ウェスト・ロンドン・ダービー」です。
西ロンドンには、以下の3チームが集っています。
特にチェルシー vs フラムは、最も伝統ある西ロンドン・ダービーと言われています。
スタジアム間の距離はわずか2.2kmほど。
富裕地区のライバル関係としても知られていますが、歴史的にはチェルシーが圧倒的に優位な関係が続いていましたね。
奇妙なライバル関係、M23ダービー
対戦カード: ブライトン vs クリスタル・パレス
これは構成案ではロンドンダービーの枠に入っていますが、厳密には「ロンドン勢(クリスタル・パレス)が関わる、最も奇妙なダービー」かもしれません。
地理的には全く隣接していません。
ではなぜ憎み合っているのか?その名の由来は、両都市を結ぶ主要な国道「M23」の存在です。
このライバル関係は比較的浅く、1970年代に両者が下部リーグで激しい昇格争いを繰り広げたことに端を発します。
歴史や地理ではなく、偶発的な対立とファン文化によって「創造」された、非常に珍しいダービーなんです。
プレミアリーグのダービーマッチ一覧|2025-26シーズン

今シーズン(2025-2026)の所属クラブと、開催される主要なダービーマッチを一覧で見ていきましょう。
2025-26シーズン 主要ダービーマッチ一覧
| ダービー名 | 対戦カード | 概要・背景 |
|---|---|---|
| ノース・ロンドン・ダービー | アーセナル vs トッテナム・ホットスパー | 純粋な地理的憎悪に基づくダービー。 アーセナルがトッテナムの領域であったノース・ロンドンへ移転した1913年に亀裂が決定的に。 |
| ビッグロンドン・ダービー | アーセナル vs チェルシー | 2000年代以降の「成功」によって生まれた現代的なライバル関係。 歴史的な怨恨ではなく、エリート同士のタイトル争いとして激化した。 |
| マンチェスター・ダービー | マンチェスター・シティ vs マンチェスター・ユナイテッド | かつてはユナイテッドが圧倒的だったが、シティの台頭により力関係が逆転。 同じ都市のクラブが共に大陸三冠(トレブル)を達成した史上初の例。 |
| マージーサイド・ダービー | リヴァプール vs エヴァートン | スタジアムの設立経緯そのもの(リヴァプールがエヴァートンの旧本拠地アンフィールドから分離独立)が起源。 プレミアリーグ史上最もレッドカードが多い。 |
| タイン・ウェア・ダービー | ニューカッスル vs サンダーランド | (今季復活) イングランドで最も激しいダービーと広く認識される。 フットボール以前の17世紀イングランド内戦(王党派ニューカッスル vs 議会派サンダーランド)にルーツを持つ。 |
| ローズ・ダービー | マンチェスター・ユナイテッド vs リーズ・ユナイテッド | (今季復活) 15世紀の内戦「薔薇戦争」(ランカスター家/赤 vs ヨーク家/白)がルーツ。 600年来の地域のアイデンティティをかけた戦い。 |
| ノースウェスト・ダービー | マンチェスター・ユナイテッド vs リヴァプール | イングランド最大の対決(ナショナル・ダービー)。 産業革命期の経済的な対立(マンチェスター運河建設)に端を発する、イングランドの「盟主」の座をかけた戦い。 |
| ウェスト・ロンドン・ダービー | チェルシー vs フラム vs ブレントフォード | 憎しみの「非対称性」が特徴。 フラムとブレントフォードはチェルシーを最大のライバルと見なすが、チェルシー側は彼らをそれほど意識していない。 |
| M23ダービー | ブライトン vs クリスタル・パレス | 地理的に近くない特異なダービー。 両都市を結ぶ高速道路「M23」に由来し、1970年代の激しい昇格争いによって人為的に「創造」されたライバル関係。 |
今シーズン、プレミアリーグの舞台で開催される、伝統的なローカル・ダービーおよび歴史的なライバル関係の対戦カードです。
2025-2026シーズンはEPLで開催されない主要ダービー
以下のダービーは、イングランド・フットボールにおいて非常に有名ですが、片方または両方のチームがEPL(1部)に所属していないため、今シーズンはEPLの舞台では開催されません。
| ダービー名 | 対戦カード | 概要・背景 |
|---|---|---|
| バーミンガム・ダービー | アストン・ヴィラ vs バーミンガム・シティ | イングランド第2の都市バーミンガムを二分する、イングランドで最も熾烈なダービーの一つ。 アストン・ヴィラにとって、PL内のどの対戦もこれに及ばない。 |
| ブラック・カントリー・ダービー | ウルヴァーハンプトン vs ウェスト・ブロムウィッチ | 「ブラック・カントリー」工業地帯の覇権を争うダービー。 世界で最も古いリーグ・ダービーの一つ(1888年~)。 |
| ドッカーズ・ダービー | ウェストハム vs ミルウォール | イースト・ロンドンの港湾労働者(ドックワーカーズ)にルーツを持つ、歴史的に最も激しい対立の一つ。 ウェストハムの最大の宿敵。 |
| イースト・ミッドランズ・ダービー | ノッティンガム・フォレスト vs ダービー・カウンティ | ノッティンガム・フォレストの主要ライバル。 |
| イースト・ランカシャー・ダービー | バーンリー vs ブラックバーン・ローヴァーズ | バーンリーの主要ライバル。 「コットン・ミル・ダービー」とも呼ばれる。 |
覇権を争うビッグ6同士の対決
ダービーとは少し文脈が違いますが、リーグの覇権を争う上で重要なのが「ビッグ6」同士の対決です。
これらのクラブ間の対決は、伝統的なダービー(ノースロンドンやマンチェスター)と重なることもありますが、多くは地理的な理由ではありません。
リヴァプール vs マンチェスター・シティや、アーセナル vs リヴァプールといった対戦は、リーグ優勝やチャンピオンズリーグ出場権を争う「勝ち点6」の価値がある試合として、伝統的なダービー以上に重要視されることもあります。
| ライバル関係 | 対戦カード | 概要・背景 |
|---|---|---|
| 現代のクラシック | リヴァプール vs マンチェスター・シティ | 伝統的なダービーではなく、2010年代後半のクロップ監督とグアルディオラ監督によるハイレベルなタイトル争いによってのみ生み出された「現代のライバル関係」。 |
| PL初期の覇権争い | アーセナル vs マンチェスター・ユナイテッド | 1990年代後半~2000年代前半、ファーガソン監督とヴェンゲル監督の下でプレミアリーグの覇権を二分した、思想的な対立。 |
これらは「現代のダービー」と言えるかもしれませんね。
一番激しいダービーはどれだ?
「じゃあ、結局一番激しいダービーはどれなの?」と聞かれると、これは難しい質問です(笑)。
激しさの種類によります。
- 歴史の根深さと憎悪: ノース・ロンドン・ダービー(不正の歴史)
- ピッチ上の激しさ: マージーサイド・ダービー(レッドカード最多)
- 地域の純粋な熱量: タイン・ウィア・ダービー(北東部の誇り)
- 歴史的な代理戦争: ローズ・ダービー(薔薇戦争)
どれも甲乙つけがたいですが、今シーズンの注目度で言えば、やはり復活した「タイン・ウィア・ダービー」と「ローズ・ダービー」の熱量は凄まじいものになると思います。
今季は見られないドッカーズ・ダービー
一方で、英国フットボールの文脈を語る上で、プレミアリーグに「ない」ダービーを知っておくことも重要かなと思います。
それが「ドッカーズ・ダービー」(ウェストハム・ユナイテッド vs ミルウォール)です。
このダービーは、ミルウォールが下部リーグ(チャンピオンシップ)に所属しているため、今シーズン開催されません。
【イングランドで最も危険なダービー】
ドッカーズ・ダービーは、イングランドで最も危険なダービーとして悪名高いです。
その起源は、テムズ川を挟んで、ともに港湾労働者(ドッカーズ)によって創設されたことに遡ります。
英国の「フーリガニズム」という暗部と強く結びついており、過去にはサポーター間の抗争が絶えませんでした。その凶暴性は映画『フーリガン』でも描かれたほどです。
タイン・ウィア・ダービーなどの「激しさ」を語る上で、その比較対象となる「究極の憎悪」のベンチマークとして存在しています。
まとめ|プレミアリーグのダービーマッチ一覧から見る今季の熱戦
一つ一つのダービーマッチには、
といった、深い「物語」が詰まっています。
2025-26シーズンは、リーズとサンダーランドの昇格によって、イングランドで最も純粋で激しいとされる2つのダービーが復活する、本当に特別なシーズンです。
順位表の数字だけでは見えてこない、街の誇りとアイデンティティを賭けた「聖戦」。
その背景を知ることで、プレミアリーグの観戦が何倍も深く、熱くなるはずです。
自分も今シーズンのダービーマッチを全力で楽しみたいと思います!


