世界最高峰のプレミアリーグで、熱狂的な人気を誇るリバプールFC。
試合を見ていると、実況や解説の人が「レッズ」と呼んだり、ファンのことを「コップ」や「スカウサー」と言ったりするのを耳にしたことはありませんか?
正直なところ、自分も最初は「なんで赤色だからってだけでレッズなの?」「コップって警官のこと?」なんて疑問に思っていました。
でも、気になって調べてみると、単なる色の名前や愛称の裏側には、
などが詰まっていることがわかったんです。
この記事では、そんなリバプールにまつわる愛称の由来や意味を、初心者の方にもわかりやすく紹介していきます。
- リバプールが「レッズ」と呼ばれるようになった意外な歴史的背景
- ファンの愛称「コップ(KOP)」や「コッパイト」の正しい意味と使い分け
- 地元サポーターが「スカウサー」と呼ばれる理由と食文化の関係
- 知っておきたいその他の愛称や、絶対に使ってはいけない蔑称の知識
リバプールの愛称「レッズ」の意外な由来と歴史

リバプールFCといえば、真っ赤なユニフォームがトレードマークですよね。
そのため、愛称が「レッズ(The Reds)」であることは多くの人が知っていると思います。
しかし、実はクラブが創設された当初から「真っ赤」だったわけではないんです。
ここでは、どのようにしてリバプールが「レッズ」としてのアイデンティティを確立していったのか、その歴史的な変遷について解説します。
チームカラーが青だったユニフォームの歴史
これは自分も知った時に驚いたんですが、実はリバプールFC、創設当初は「青と白」のユニフォームを着ていたそうです。
1892年のクラブ創設時、リバプールは同じ街のライバルであるエバートンFCが使用していたスタジアム(アンフィールド)と設備を引き継ぐ形で誕生しました。
そのため、最初の数年間はエバートンが残していった青と白のユニフォームをそのまま使用していたという、今では考えられないような歴史があります。
その後、1894年にエバートンとの差別化を図るために、リバプール市の象徴的な色である「赤」を採用し、ここで初めて「赤いシャツ」が登場しました。
もしそのまま青いユニフォームを着続けていたら、今の「レッズ」という愛称は存在しなかったかもしれませんね。
ライバル関係であるエバートンの設備を引き継いでいたのは驚きです。
愛称レッズの由来とシャンクリーの改革
現在では当たり前になっている「全身赤」のユニフォームですが、これが定着したのは1960年代のことでした。
それ以前は、赤いシャツに白いパンツという組み合わせが一般的だったようです。
この歴史を変えたのが、リバプールの中興の祖とも呼ばれる伝説的な名将、ビル・シャンクリー監督です。
彼は1964年、チームに心理的な強さを植え付けるために、ユニフォームをシャツからソックスまで全て赤一色で統一することを提案しました。
シャンクリー監督は、全身を赤で包んだ当時のキャプテン、ロン・イェイツを見て、
「お前は凄まじい、恐ろしいほどだ。まるで7フィート(約213cm)の巨人のように見えるぞ!」
と叫んだと言われています。
これが、世界中で恐れられる「The Reds」の真の始まりだったんですね。
心理学が生んだ全身赤色の愛称と効果
シャンクリー監督が全身赤を採用した背景には、単なる見た目のカッコよさだけでなく、色彩心理学に基づいた明確な戦略がありました。
彼は「赤は危険(Danger)であり、力(Power)の象徴である」と信じていました。
対戦相手に対して、視覚的に威圧感を与え、自分たちを実際の体格よりも大きく強く見せる効果を狙ったのです。
実際に、この「オール・レッド」のユニフォームを採用してから、リバプールは黄金時代へと突入していきます。
愛称としての「レッズ」には、相手を圧倒するという強い意志が込められているんですね。
古風な呼び名レッドメンの意味と背景
「レッズ」以外にも、古くからのファンや現地のサポーターの間で使われている愛称に「レッドメン(The Redmen)」があります。
これは文字通り「赤い男たち」という意味で、より古風で勇猛な響きを持つ言葉です。
現在でも
などで頻繁に使われています。
「レッズ」が世界的な通称だとすれば、「レッドメン」はより伝統や歴史を重んじる文脈で使われることが多い印象です。
この言葉を知っていると、ちょっと通なファンに見えるかもしれません。
リバプールファンの愛称コッパイトの真実

リバプールの試合を見ていると、スタンドを埋め尽くすファンを指して「KOP(コップ)」という言葉がよく使われます。
しかし、この言葉の本来の意味や由来を知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。
ここでは、リバプールファンのアイデンティティとも言える「KOP」と「コッパイト」について深掘りしていきます。
ファンの愛称コッパイトの正確な意味
まず言葉の定義から整理しましょう。
正確には、熱狂的なリバプールファンのことを英語では「Kopite(コッパイト)」と呼びます。
これは、ホームスタジアムであるアンフィールドにある有名なゴール裏スタンド「Spion Kop(スピオン・コップ)」に陣取る人々、という意味です。
つまり、「Kop」はスタンド(場所)の名前であり、「Kopite」はその場所にいる人(ファン)を指す言葉なんです。
KOPスタンドの名称とボーア戦争の悲劇
では、なぜスタンドが「スピオン・コップ」と呼ばれるようになったのでしょうか。その由来は、1900年の「ボーア戦争」という悲しい歴史に遡ります。
南アフリカで行われたこの戦争の中に、「スピオン・コップの戦い」と呼ばれる激戦がありました。
この戦いでイギリス軍は多くの犠牲者を出しましたが、その多くがリバプール出身の兵士たちでした。
1906年にアンフィールドに新しいスタンドが建設された際、その急勾配に土が盛られた形状が、多くの同胞が命を落とした南アフリカの丘に似ていたことから、追悼の意を込めて「スピオン・コップ」と名付けられたのです。
つまり、KOPという愛称には、単なる応援席という意味を超えて、亡くなった地元の人々への深い哀悼と敬意が込められているんです。
これを知ると、応援歌「You’ll Never Walk Alone」が持つ意味も、より深く感じられますよね。
\「You’ll Never Walk Alone」が歌われる理由はコチラ/
日本独自のKOPという呼び方の注意点
日本のSNSやファンコミュニティでは、「私はKOPです」や「KOPの皆さん」といったように、ファンのことを指して「KOP」と呼ぶのが一般的になっています。
もちろん、日本国内で使う分には全く問題ありませんし、言葉は生き物なので文化として定着しています。
ただ、もし海外のファンと交流する機会があったら、少し注意が必要です。
英語圏で「I am a Kop」と言うと、「私はスタンド(建造物)です」という意味に取られてしまい、不思議な顔をされるかもしれません。
英語で自己紹介する時は「I’m a Kopite」や「I’m a Liverpool fan」と言うのが正解です。
聖地アンフィールドとファンの特別な絆
アンフィールドのKOPスタンドは、単なる観客席ではありません。
チームが苦しい時にこそ声を張り上げ、ボールをゴールへと「吸い込ませる」と言われるほどの圧倒的な雰囲気を作り出す場所です。
「Kopite」であることは、単にリバプールが好きだということ以上に、この特別なコミュニティの一員であり、チームと共に戦う「12番目の選手」であるという誇りを意味しています。
リバプールサポーターの愛称スカウサー

リバプールに関連する言葉で、もう一つよく耳にするのが「スカウサー(Scouser)」です。
これはファンだけでなく、選手や監督のインタビューでも頻繁に登場します。一体どういう意味なのでしょうか?
サポーターの愛称スカウサーの語源
「スカウサー」とは、本来は「リバプール出身の人」を指す言葉です。
の生粋の地元民のことですね。
リバプールFCは地域密着型のクラブなので、地元の熱烈なサポーターの多くは「スカウサー」でもあります。
そのため、文脈によっては「地元の熱心なリバプールファン」という意味合いで使われることも多いんです。
名前の由来は船乗りが愛したシチュー
この「スカウサー」という言葉、実は食べ物の名前に由来しているって知っていましたか?
その食べ物とは、「Lobscouse(ロブスカウス)」、略して「スカウス」と呼ばれるシチュー料理です。
もともとは北欧の船乗りたちが食べていた煮込み料理で、港町であるリバプールに伝わり、地元のソウルフードとして定着しました。
貧困を誇りに変えたスカウスの文化
かつてのリバプールは、決して裕福な都市ではありませんでした。
貧しい労働者階級の家庭では、高価な肉を買うことができず、野菜ばかりのシチューを食べることも珍しくなかったといいます。
肉が見当たらないことから、自虐的に「Blind Scouse(盲目のスカウス)」なんて呼ばれることもあったそうです。
他の地域の人々は、そんなリバプールの人々を「あいつらは毎日スカウスばかり食べている」と揶揄して「スカウサー」と呼び始めました。
しかし、リバプールの人々はこの呼び名を嫌がるどころか、むしろ自分たちのたくましさや労働者階級としてのアイデンティティを象徴する言葉として、誇りを持って受け入れたのです。
地元民とファンを繋ぐ言葉のアイデンティティ
現在では、「スカウサー」はリバプール独特の訛り(スカウス訛り)や、独特のユーモア、反骨精神を持つ人々を指す言葉として定着しています。
リバプール出身の選手、
- スティーブン・ジェラード
- トレント・アレクサンダー=アーノル
などは、ファンの間でも特別な存在として愛され、「地元の英雄(Local Lad)」として称えられます。
彼らは「スカウサー」としての誇りを胸にプレーし、ファンもまた彼らに自分たちの姿を重ね合わせるのです。
スパイスボーイズやプールなどその他の愛称

リバプールには、これまでに紹介した以外にも、特定の時代や文脈で使われる愛称や略称がいくつか存在します。
中には、ファンとして知っておくべきポジティブなものもあれば、使用を避けるべきネガティブなものもあります。
90年代を象徴する愛称スパイスボーイズ
1990年代半ば、リバプールには若くて才能があり、ルックスも良い選手たちが揃っていました。
といった選手がその代表です。
彼らは当時大人気だったアイドルグループ「スパイス・ガールズ」をもじって、「スパイス・ボーイズ(The Spice Boys)」と呼ばれました。
しかし、この愛称には「サッカーよりもファッションや遊びに夢中なアイドル気取り」という皮肉が込められていました。
1996年のFAカップ決勝で、彼らが揃いの白いアルマーニのスーツを着て登場し、試合に負けたエピソードは有名で、当時の「才能はあるが勝利への執着が足りない」チームを象徴する言葉として記憶されています。
略称プールの意味とファンが抱く印象
海外の掲示板やSNS、あるいは文字数制限のある見出しなどで、リバプールのことを「Pool(プール)」と略して表記するのを見かけることがあります。
これは単なる短縮形なのですが、実は地元のスカウサーや熱心なファンの間では、あまり好まれていない呼び方とされています。
自分たちの愛する街とクラブの名前を安易に省略することは、どこかよそよそしく、敬意に欠けると感じる人もいるようです。
SNSなどでファンと交流する際は「Pool」ではなく、
と書く方が無難で、好感を持たれやすいそうですね。
避けるべき蔑称ビンディッパーズの知識
リバプールファンとして活動していると、他チームのファンから心ない言葉を投げかけられることがあるかもしれません。
その代表的なものが「Bin Dippers(ビン・ディッパーズ)」という言葉です。
これは「ゴミ箱(Bin)を漁る人(Dipper)」という意味で、かつてリバプール市が深刻な不況と失業率に苦しんでいた時代を背景に、貧困を嘲笑する極めて悪質な差別用語です。
もしネット上でこの言葉を見かけても、決して使ったり、面白がって反応したりしないでください。
これはフットボールのライバル関係を超えた、人の尊厳に関わる侮蔑的な表現です。
時代とともに変化する様々な呼び名
このように、愛称や呼び名は時代とともに生まれ、変化していきます。
かつての「スパイス・ボーイズ」のような皮肉な愛称もあれば、ユルゲン・クロップ監督時代には、その情熱的なスタイルから「メンタリティ・モンスターズ」という新しい称賛の言葉も生まれました。
愛称を知ることは、その時代のクラブの空気感や、ファンがチームをどう見ていたかを知ることでもあります。
まとめ|リバプールの愛称には深い歴史が隠されていた
- 愛称「レッズ」は、シャンクリー監督が相手を威圧するために採用した「全身赤」のユニフォームが由来。
- ファンを指す「コッパイト(Kopite)」は、ボーア戦争の悲劇に由来するKOPスタンドに集う人々のこと。
- 「スカウサー」は本来リバプール出身者を指し、貧しくもたくましい船乗りたちのシチュー料理が語源。
- 「KOP」は場所、「Kopite」は人。英語で話すときは使い分けよう。
- 「ビン・ディッパーズ」などの差別的な蔑称は絶対に使用しないこと。
リバプールの愛称には、単なる色の名前以上の、深くて重厚なストーリーが隠されていました。
それは、戦争の悲しみや貧困の苦しみを乗り越え、それを自分たちの誇りへと変えてきたリバプールの人々の歴史そのものでもあります。
次にリバプールの試合を見る時は、ぜひ「レッズ」や「コップ」という言葉の裏にある物語を思い出してみてください。
きっと、今まで以上にクラブへの愛着が湧き、応援にも熱が入るはずです。
自分も、一人のリバプール好きとして、この素晴らしい歴史を持つクラブをこれからも全力で応援していきたいと思います!


